Tokyo Video Magazine VIS 、閉鎖のお知らせ
日頃はTokyo Video Magazine VIS を御視聴頂き、誠にありがとうございます。
2007年末の立ち上げ以降、日本の映像作家および作品の素晴らしさを世界中の人々に伝えるべく、19名の映像クリエイターの作品、全320作をストリーミングして来た「VIS」ですが、残念ながら2010年5月をもって閉鎖する運びとなりました。
我々VISスタッフ一同は、約5年前より「クリエイター名で検索できるMusic Video(以下、MV)作品のストリーミングサイト」を作成するべく、準備を重ねて参りました。
かねてよりMVは「楽曲およびアーティストの販売促進ツール」という広告性と、「トップクリエイターによる革新的な表現」という作品的価値が混在する、独創的なコンテンツとして取り扱われてきました。おのずと「MVはミュージシャンの作品であると同時に映像クリエイターの作品である」と解釈できるのですが、当時は権利の都合上、クリエイターが手がけたMVの動画を自身のホームページで掲載できないという、不自然な状況に陥っておりました。日本でMVが作られるようになってから約30年の歴史の中、MVはあくまでもレコード会社およびミュージシャンの所有する広告兼作品であると考える風潮にあったので、クリエイターはその類いまれなる才能、作品の素晴らしさを認められたとしても、作品発表や作品の発売を自分の意志で行えないどころか、禁じられておりました。
時期を同じくして、インターネットや携帯電話でMVの有料配信が始まりました。以前からミュージシャン名義のDVDなどでMVは発売されていましたが、ネットワーク環境でも同様に「商品」として扱うために、フルサイズのMVを無料で見られる動画サイトを取り締まる必要があった。そこで、制作者の意志やファン、一般ユーザーがネット上にMVを動画掲載することを禁じ、また、You Tubeなどの動画投稿サイトを違法とし、MVはインターネット上に現れる度に削除される幻のようなコンテンツとして扱われることになりました。
制作者は、自分の作品を、自分が作ったと大きな声でいえないジレンマから、「MVを作ったのは誰か」「誰の作品なのか」「映像における著作権とは」「クリエイターは著作者ではないのか」といった疑問を抱き、以降、著作権法の観点を交えた議論が頻繁になされるようになりました。
そこで我々は、1つのトライアルを実行することを決意しました。「誰が作った作品なのか」を明確化し、クリエイター名で検索でき、動画もストリーミングできるサイト、つまり「MVは、ミュージシャンの作品でありながら、クリエイターの作品でもある」ことを立証するためのサイトの作成を計画したのです。
そのためには、違法の投稿サイトでは意味がない。正々堂々、音楽と映像が対等である世界を、我々は作りたかった。
そこで、クリエイターや制作会社はもちろんのこと、各レコード会社の宣伝担当の方々、法務部の方々、著作権法に明るい弁護士先生とのディスカッションを重ね、2007年末に立ち上げたサイトが「 Tokyo Video Magazine VIS」です。
様々な見地よりMVを検証した結果、「購買に結びつくための45秒までの視聴であれば、音楽を無償で公衆配信できる」という法に則り、VISでは45秒までのストリーミングおよび、amazonやiTunes music storeへのリンクを徹底させました。フル尺のMVは「商品」として購買するコンテンツ、45秒まではその「宣伝」と割り切り、MVの商品価値を高めることによって、「商品化されても二次使用料が制作者に還元されない」という現状を打破し、クリエイターへ売上げが還元され、さらにその能力評価・対価を上げることが、我々の目標でした。
その際、当サイト自体はあくまでも「非営利・無償」で運営する契約を各レコード会社と交わしました。営利運営する場合は利益を分配する必要があり、そのパーセンテージの折り合いがつかず、また、営利であれば45秒であっても無償で音楽を貸し出せないという方針に基づき、我々は今まで 「VIS」を非営利運営して参りました。結果、マネタイズできないサイトを永続的に運営することができず、残念ながら閉鎖の機を迎えることとなりました。
しかし、閉鎖の要因は運営資金面の問題のみでありません。インターネットというメディアでのMVの取り扱われ方が急速に変化したことにも、大きな影響を受けています。
レコード会社は一時期インターネットでの情報の無料化を警戒しておりましたが、無料で大量の情報を送受信できるインターネットメディアの特性を利用する風潮に風向きが替わり、商品性ではなく、以前のように、純然たる広告としての利用価値を、MVに見いだすようになりました。今や、レコード会社自身がYoutubeにチャンネルを持ち、フルサイズのMVをあげています。
このような背景があり、関係者各位と密に連絡を取り、合法のうちに許諾作業を行い、高画質のMVのストリーミングを非営利で運営することが、経済的にも時代的にも最適かどうか、再三にわたり議論を繰り返し、結果、閉鎖を決断いたしました。
許諾を取らずにYoutubeからのリンク等で VISを存続することも検討しましたが、今までお世話になりましたレコード会社のみなさんや制作会社のみなさん、なにより、「VIS」に参加して下さったクリエイターのみなさんとスタッフ、アーティストのみなさんの努力と信頼関係を鑑みると、心苦しく、苦渋の決断ではありますが、「VIS」は有終の美を飾ることにいたします。
「真に秀逸な映像コンテンツを作り上げる素晴らしい作家たちを、世界中の人々に紹介したい」「そのたぐいまれなる才能をきちんと評価してほしい」という純粋な気持ちが、現在まで我々を突き動かしてきました。この思いに変わりはありません。現状の失敗と反省を宝にして、また、新たなアプローチで映像クリエイターを応援する活動を行いたいと思います。
最後になりましたが、「Tokyo Video Magazine VIS」をご視聴頂いたみなさま、今まで本当にありがとうございました。すばらしい映像クリエイターとその作品の存在をいつまでも愛し続けて頂ければ、本望です。
4月某日
Tokyo Video Magazine VIS 編集長
林永子